Higher Education in the US: 米国の高等教育事情 at Ryukoku University, June 2, 2012

Author: Staff Writer
June 2, 2012

2012年6月2日に龍谷大学深草学舎で「米国の高等教育事情」と題して講演を行ないました。YouTubeでも講演を見ることができます。以下は講演要旨です。
 
本講演では、米国の公立大学の授業料の推移と奨学金制度を考察する。まず、公立大学授業料の推移だが、複数の公立大学システムが同時に存在していることを理解しなければならない。たとえば、カリフォルニア州の高等教育制度は、UCシステム(例:カリフォルニア大学バークレー校)、CSU/Cal Stateシステム(例:サンフランシスコ州立大学)、そしてカリフォルニア2年制大学システム(例:サンフランシスコ市立大学)という3つのシステムから構成されている。米国の高等教育にかかるコストは上昇を続けており、それはこうした公立大学でも例外ではない。たとえば、上記のCSU/Cal Stateシステムの過去10年の学費負担の推移を眺めると、2002-03年度では$1,572(学部生)であったのが2011-12年度では$5,472に達し、過去10年で3倍強になっていることがわかる。さらに、さほど大きな金額ではないにせよ、授業料以外にも、健康保険料等、各キャンパスに決定権のあるいろいろな手数料の総額も過去10年で2倍強という上昇カーブを描いている。

こうした上昇を続ける学費負担の軽減策として学生援助制度、つまり奨学金システムが存在するのだが、これにはグラント、ワーク・スタディ、連邦保証ローン、スカラーシップ等がある。奨学金は能力のある学生に対して、金銭の給付・貸与を行なう制度であり金銭的・経済的理由により修学困難とされる学生に修学を促すことを目的とすることも多いが、金銭的・経済的な必要性を問わず、学生の能力に対して給付されることもある。つまり、前者はneed-baseの奨学金であり、当該大学で勉学するのに十分な学力と資質をもっているけれども、経済的な理由でその大学に進学することが難しい学生に与えられる。これに対して、後者は成績優秀者に与えられるmerit-baseの奨学金で、留学生も対象に含まれる。現在、連邦政府には、パーキンス・ローン、スタフォード・ローン利子補助あり(在学中のローン金利を連邦政府が支払うスタフォード・ローン利子補助なし、そして(保護者が貸付対象となる)プラス・ローンと4種類に大別されるが、この中で中心となるのは、貸し付け対象が学生であるスタフォード・ローンで、連邦政府ローンの80%程度、全体でも65%程度を占めている。

本講演では(1)1965年に教育機会給付奨学金、連邦保証ローン、ワーク・スタディ・プログラムが学生援助の方法として規定されて以来(2)1970年代前半には、連邦政府の援助対象が低所得層の学生援助へと重点が移行することでペル奨学金が導入され(3)1970年代後半には、連邦政府の学生援助政策がneed baseの助成金からローンに切り替えられ、連邦政府による保証ローンであるスタフォード・ローンが拡大(4)1980年には、保護者が貸付対象となるプラス・ローンが導入、そして(5)1990年代に入ると、needによらず、利子補給も行なわない、連邦政府による債務保証のみを行なうスタフォード・ローンプログラムが導入されるといった歴史的変遷を概観する。そして、こうした歴史的変遷が、米国の奨学金制度が、学費負担軽減にどのような影響を与えているかを探る。